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知能の得意不得意
更新日:2019年6月24日
知能指数(IQ)という言葉をしばしば見かけるようになりました。メディアで見かけるIQは高ければいいかのような表現ですが、実際にはそこまで単純ではありません。IQの測定法として最も妥当性が高いと考えられているのはウェクスラー成人知能検査(WAIS)と呼ばれているものです。WAISのフルスケールスコアと呼ばれているものが俗にいうIQです。ただ、WAISにはフルスケールの下に14個の下位検査があり、それを4つの群指数にしています。具体的には、言語理解(VC)、知覚統合(PO)、作動記憶(WM)、処理速度(PS)の4つです。フルスケールが高いことよりもこれらの4つの指標のバランスがいいことの方が大事かもしれないのです。それでは四つの指標はどのような意味があるのでしょうか?
まずVCは単語や知識の積み重ねがどのくらい達成できているかが反映されます。次にPOは絵画完成、積木模様、行列推理という三つの検査からなっています。これらは見たものを処理する能力です。一方で、WMは算数や数唱から成る指標で、聞いたことを処理する能力が反映されます。最後のPSは符号と記号探しという下位試験からなり文字通り処理の速さを反映します。これらの指標のバランスからはいろいろなことがわかります。
フルスケールIQが高いにも関わらずVCが低ければ、総合的なIQの期待に対して知識の積み重ねが少ない可能性があります。その場合は、知識の足りなさを補うようなサポートが必要でしょう。具体的には、みんなが知っていると思っていることをきちんと説明する、あるいは難しい単語を使う職場ではその説明がいつでも手に入るようにして置くことも重要だと思います。
POが低い場合は、見たものを記憶し処理することが困難かも知れません。そのような場合には、たくさんの視覚情報が一度に入るときはそれを小分けにしたり、長い時間見たり、見せたものを言葉にして視覚情報を言語情報に変換するサポートがいいでしょう。W
Mが低いと耳で聞いたことはすぐに忘れてしまうかも知れません。そのハンデを予防しようとするといくつもの情報を一度に口頭で伝えるのではなく、少しずつ伝えたり、紙に書いて視覚情報として伝えたりするといいでしょう。
PSが低い場合には、処理に時間がかかるので仕事に必要な時間を長めに提供することが大切です。一方で、切り替えの遅さがPSを下げている可能性もあります。例えば、ある方法Aで解決できる問題があったとします。3問ほどAのやり方で解ける問題が続いた後に、方法Bを使わないと解けない問題が出れば、AからBへの切り替えが必要です。
このように知能には様々な側面があり、突出しているだけではその能力を活かすことができず、相対的に低い能力を補う方法を確立しなければなりません。また、このような凸凹があることが間接的に発達障害的特性を反映することがあります。例えば、処理速度が遅いものの、視覚的記憶が強いというのはASD傾向の強い方に見られる特徴です。一方で、作動記憶が低いことはADHD症状の反映と見なされる場合もあります。私たちはこのような能力の把握のお手伝いもしています。