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自尊心とプライドの複雑な関係

自尊心が高いがプライドが低い、というと一見何を言っているかわかりにくいですよね。

でも言い間違いではないんです。自尊心とプライドは似ていますが、異なるものなのです。ふたつはどのように違って、それぞれどうすれば健康でいられるのかご説明します。それを理解することで、仕事のパフォーマンスがあがり、人から好かれるようになります。

自尊心とは、文字通り、自分を尊重する心のことです。それは、他者からの評価ではなく、自分が自分のことをみて、ありのままの自分を受け入れることで成立します。別の表現をすれば、自尊心は人からの評価を気にせず、誰とも競争していないときに少しずつ培われるものなのです。

自尊心が高いことは医学的にはとても大切です。高い自尊心はうつ病などさまざまな病気を防ぐとされています(Sowislo & Orth 2013)。原因なのか結果なのかはっきりしない部分はありますが、高い自尊心は仕事上での成績や学業成績や幸福感との関連も強いと明らかになっています。また、自尊心が高いことはその人を魅力的にしますので結婚や友人関係における満足感とも関連します。

一方でプライドとはなんでしょうか。英語辞典でprideとひくと、自尊心と訳されてしまうので自尊心と同一のもののように見えて、塩梅が悪いです。ただ、プライドの類義語の自惚れやおごりといえばもう少しはっきりするかもしれません。こちらは英語ではnarcissismです。ここまでくると自尊心とプライドの違いが見えてくるかと思います。

自尊心が他者の評価や他者との競争を無視することで生まれるのに対して、プライドは他者との比較や他者からの目線の上に成り立っています。これは一つの解釈で、別な解釈もあります。例えば、いずれも他者と比較しているものの、narcissismが高い人は、知能や技能は他者と比較して高いもののモラルに関しては他者と比較して高くない。一方で、自尊心の高いひとは知能とモラルの両方を他者と比較し高くするよう心がけているなどです(Campbell et al., 2002)。

大学生を対象とした研究で、プライド(narcissism)はアルコール依存症を起こすが、自尊心(self-esteem)は起こさないと報告されています(Luhtanen and Crocker, 2005)。同様に、自尊心は暴力と関係ないが、プライドは暴力を起こす(Bushman and Baumeister, 1998)など、自尊心とプライドが違うものとして理解され、それが行動の違いにつながっていると報告されているのです。

職場での様子はどうでしょうか。自尊心が高い人は、人からの影響を受けませんので、多少の人間関係のもつれでへこたれません。また、他者との関係を食い物にしていないので、人を見下ろすことも、羨むこともありません。

一方でプライドが高い人はどうでしょうか?お察しいただけるかもしれませんが、プライドが高い人は、他者からの視線を気にします。人が見てる前ではマウンティングしたり、 人から冗談を言われると本気で怒ったりします。プライドが高いと、人としては付き合いにくいのです。

つまり、自尊心が高いがプライドが低いというのはいい組み合わせでしょう。自分を尊重しているさまは好感が持たれるでしょう。プライドが低いことは他者への尊重につながります。逆に自尊心が低いがプライドが低いと言うのはあまりいい組み合わせではありません。実は自分のことは尊重できてないのに、人のことは見下すことがあるのです。

ぜひ、自尊心とプライドの違いを意識して健康で、生産的で、人から好かれる人生を送りましょう。

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