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自閉スペクトラム症の得意不得意
更新日:2019年6月30日
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)とは社会コミュニケーションの質的障害および反復的常同的行動を中核症状とする発達障害です。この診断名および診断基準は2013年にアメリカ精神医学会から発行されたDSM-5で規定されています。そこで定められている社会コミュニケーションの質的障害とは、
1. 社会的で情動的な相互作用の欠如:具体的には会話のやりとりができなかったり、感情や興味を共有することができなかったり、会話をうまく始められなかったりと言ったことが挙げられます。
2. 非言語的なコミュニケーションの障害:言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがうまく噛み合わなかったり、視線が合わなかったり、ジェスチャーをうまく使えなかったり理解できなかったりという例が挙げられます。
3. 対人関係を構築し、維持し、理解し合うことができない:同僚に興味を持てなかったり、友達ができなかったりします。
一方で反復的常同的行動とは、
1. 同じ動き、同じものを使う、そして同じ話し方をする
2. 変化への対応の乏しさ、ルーチンへの柔軟性を欠いた執着、儀式的行動
3. 興味の限局と限局
4. 感覚過敏・鈍麻
と定義されています。
ここに記載されていないけれどしばしば問題になるのは、本人は良かれと思ってしたことが相手にとっては迷惑だったり気分を害したりするという出来事です。これは相手の気持ちを理解しきれていない、想像力あるいは心の理論の問題と感がられます。
研究によって多少ばらつきますが、概ね100人に1人がASDの診断基準を満たすと考えられています。さらに、診断には至らないもののASD的な特性を持っている人はさらに多いと報告されています。
また、反復的常同的行動は多くの場合に大変な症状ですが、時にはいい方向に働くこともあります。例えば、数字に大変強くて、数学が得意になったり、プログラマーになったり、トレーダーになったり、難関資格をとったり、あるいはこだわりの製品を作ったりと発展しうるのです。
裏を返せば、第三次産業に限らず労働者に求められている能力と反復的常同的行動は表裏一体なのです。そして、反復的常同的行動と社会コミュニケーション障害は独立しておらず(無関係ではなく)、相関していると考えられています。それなのに、社会コミュニケーション能力は高くなければならないのです。このアンバランスさが労働者のストレスとなり企業の生産性を下げているのではないでしょうか。