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Adult onset ADHD
注意欠如多動症(ADHD)は、これまで4~6歳頃が発症のピークで未成年の間の有病率は5%程度であり、その有病率は年齢とともに徐々に低下すると考えられていました。臨床的には、成長とともに不注意や衝動性が改善する症例を見ていますので、当然にこの有病率の低下は、幼少期に症状が顕著だった人が成長とともに症状が改善し診断基準を満たさなくなったことを反映していると考えていました。最近の研究では、これは部分的に正しいと理解されています。どのような新しい知見が加わったかというと、幼少期にADHDと診断されていたもののほとんどが成人期にはADHDの診断基準を満たさないこと、そして成人期にADHDと診断された人の詳細な病歴を確認して見たところ幼少期にはADHDの診断基準を満たさなかったということです。言い換えると、幼少期にADHDと診断された人たちと成人期にADHDと診断された人たちの重複はほとんどないということなのです。これは発達障害の概念自体に挑戦するものです。なぜなら、発達障害は生まれながら、あるいは十分に幼い時から症状が始まるという定義があるためです。大人になってADHDを発症した一群が、幼少期発症のADHDの一群と、症状や脳の結合や構造、遺伝子などでどの程度類似しているのかはまだわかっていません。幼少期にADHDと診断されたもので大人になっても症状が残るものと、症状が消えたものの比較が行われている段階です。ちなみにこういった研究では大人になって症状が消えた一群でも症状が持続する一群と類似した脳の特徴を一部持つことが報告されています。Adult onset ADHDが、症状や病態生理の観点から子供の頃からADHDと診断されている人とどう違うのかあるいは一緒なのか、今後の研究がまたれます。